2012-11-15
過失とは?
上羽です。
みなさんは、昨年(2011年)の8月に石川県で、夫の誕生日をサプライズで祝おうと、妻とその友人たちが深さ約2.3メートル落とし穴を掘り、誤って夫婦とも落とし穴に落ちた結果、両名とも亡くなってしまったという事故のことを覚えておられるでしょうか。
この事故から約1年がたった今年の10月、亡くなった夫の両親が、亡くなった妻の両親と、落とし穴を掘った友人たちに対し、損害賠償請求を求める民事訴訟を提訴したとのことです。
友人たちを訴えるのは、理解できると思いますが、妻の両親はなぜ訴えられるかを解説しますと、妻が掘った落とし穴で夫が亡くなっていることから、まず、妻が夫に対して損害賠償義務を負います。その損害賠償義務を妻の両親は相続したことから、妻の両親が訴えられたのだと思われます。ここで、損害賠償義務といった負の財産まで相続するの?、と思われた方もおられるかと思いますが、相続するのです。したがって、借金のような負の財産も、相続が発生するのでご注意を。
この裁判で、争点となるのは間違いなく、友人たちに「過失」が認められるか否か、だと思います。ここで、「過失」とは、危険が発生することの予見可能性が存在し、かつ、その危険を回避することが可能であったこと、を意味します。この事件で、回避可能性を認めることは簡単です。落とし穴なんか掘らなきゃよかった、というだけです。
問題は、予見可能性の有無です。つまり、この落とし穴に落ちたら、人が死ぬ、と予見できたかです。私は、この予見可能性を認めることはかなり難しいと思っています。というのも、このような落とし穴のドッキリは、テレビでしょっちゅう放映されており、こんな落とし穴で人が死ぬことはない、と思っている人が大多数だと思うからです。そうすると、この友人たちに予見可能性を認めるのはかなり困難だと思われるのです。
現に、この事件は、刑法上「重過失致死罪」という罪に該当し得ますが、上記のように予見可能性認めることは困難、すなわち、重過失を認めるのは困難、と判断されたのか、起訴猶予処分とされ、刑罰は科されませんでした。
とはいえ、人が二人も亡くなってしまっている事故で何の責任も発生しないというのはいかがなものかと、裁判所は当然考えるでしょうから、この事件の裁判の経過を注視したいと考えています。
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