2013-01-30
無罪判決
最近、奈良地方裁判所で「無罪」判決の言い渡しがありました。
弁護士が主役のドラマなどでは、無罪判決が勝ち取られる結末が多いですが、現実は無罪判決を勝ち取った経験のある弁護士は、ごく少数です。なぜなら、日本の刑事裁判の有罪率は99.9%であり、いったん起訴されてしまえば、その裁判で無罪判決が言い渡される可能性はほとんどないからです。
この有罪率の高さにも一定の理由はあります。それは、検察官は逮捕した被疑者を全て起訴しているのではなく、強力な捜査権限により収集した証拠により、有罪立証の可能性が高い事件を起訴を起訴しているからです。これを起訴便宜主義といいます(刑訴248条)。
ただし、この有罪を基礎づける証拠に被疑者の自白が含まれている場合は、要注意です。被疑者は、20日間もの長期間取り調べを受けることから、その圧力に屈して、虚偽の自白をする場合があるからです。実際そのような虚偽自白に基づき有罪判決を受けた被告人が、後に新証拠により無罪となった事例がいくつもあります。
日本弁護士連合会は、国に対して、このような虚偽自白を防止するため、取調の全過程の録音・録画を求めていますが、国はなかなかこれに応じようとしません。
奈良地方裁判所のように、事件数が大都市に比べ少ない裁判所では、無罪判決は年に数回しか言い渡されません。なので、私も含めて奈良の弁護士は、この無罪判決がどのような内容なのか興味津々の状況です。
上羽